借地人・借家人が履行すべき義務を履行しない債務不履行の状態になっても、それだけで賃貸借契約を解除することはできません。
借地借家法に規定はありませんが、債務不履行によって両者の信頼関係が破壊されたといえる状態に達した場合にのみ解約できる、とする判例が確立しているからです。

債務不履行の典型例としては、賃料不払い、用法遵守義務違反、賃借権の無断譲渡・転貸があります。

賃料不払いや用法遵守義務違反については、それらの義務違反が認められるからといって直ちに契約を解除することはできません。
「賃料を支払って下さい」、「正しい方法で利用して下さい」と賃借人に対して催告をすることが必要です。そして、催告後相当な期間が経過したにもかかわらず、賃借人が態度を改めないような場合に契約を解除できるのです(民法541条)。

すなわち、解約するためにはこれらの義務違反に加えて、催告と相当期間の経過、信頼関係を破壊するほどの背信性という要件を満たすことが必要というわけです。

もっとも、賃貸借契約の継続を困難とするほど信頼関係の破壊が著しい場合は、催告なしで直ちに解除することができます。これを無催告解除といいます。

なお、契約に無催告解除の特約がついていることがあります。この場合でも、ささいな義務違反によりただちに無催告解除できるわけではありません。
義務違反に加え、無催告解除しても不合理とはいえないほどの背信性を基礎付ける事情がある場合に無催告解除ができると最高裁は考えています。

これに対し、無断譲渡・転貸については、民法612条より無催告解除が認められています。催告と相当期間の経過という要件は不要と考えられています。

もっとも、この場合も背信行為と認めるに足りない特段の事情があれば、解除はできないと考えられています。

これは、総合事情判断説という基準によって判断されます。
すなわち、違反行為を中心に諸般の事情(賃借人が転貸で高額の中間所得を得ている、賃借権譲受人や転借人の職業・品位・素行等に問題があるなど)を総合考慮して判断します。
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