賃借人の有する賃借権という権利は、本来極めて弱い権利です。

(1)対抗力

まず、賃貸人である所有者が土地や建物を譲渡した場合、賃借人は新所有者に賃借権を主張することができません。これを賃借権には対抗力がない、といいます。

不動産の賃貸借については、民法605条により登記をした場合には対抗力を得ることになります。しかし、登記は賃貸人・賃借人による共同申請を原則とするところ、賃貸人には登記に協力する義務がありません。
賃貸人からすれば賃借人が対抗力を有することで何も得をしませんから基本的には共同申請に非協力的でしょう。そのため、この規定の実効性は低いといえます。

(2)存続期間

期間を定めた場合、民法上は最長期間は20年、最短期間は自由に定めることが可能です。契約を更新するかは賃貸人の自由です。

期間を定めない場合、制限はありませんが、賃貸人は土地であれば1年前、建物であれば3ヶ月前に解約の申し入れをすることで自由に契約を終了させることができます(民法617条)。

このように、不動産を利用するという観点からすれば、存続期間は短く、不安定なものといえます。

(3)賃借権の譲渡・転貸

他人に借りているものをまた貸しするようなものをイメージして下さい。このような賃借権の無断譲渡・転貸は賃貸人からの解除事由となります(民法612条)。

賃貸人の許可を得ない限り、賃貸借契約の残存期間に賃借権を売買して、期間満了前に投下資本を回収することができないことになります。


これに対して、借地借家法では以下のように修正されています。

(1)対抗力

建物所有目的の借地については、地上に登記のある建物を有していれば土地の賃借権についても対抗力が認められることになります(借地借家法10条)。

また、借家についてはそこに居住(占有)していればそれだけで対抗力が認められます(借地借家法31条)。

賃借人にとっては容易に対抗力を得ることができるようになりました。

(2)存続期間

ここでは、原則的形態である普通借地権・借家権について説明します。定期借地権・借家権については次項を参照下さい。

期間を定めた場合

原則として最長期間は制限がないです。

最短期間は原則として、借地については30年です(借地借家法3条)。借家については1年でそれ未満の期間が定められた場合は期間の定めがないものとされます(借地借家法29条)。

借地の場合では、賃借人が契約の更新を請求又は使用を継続したときに賃貸人が解約するためには、契約更新時に正当事由のある異議を述べることが必要です(借地借家法5条、6条)。初回更新後は20年、以後の更新後は10年の存続期間となります(借地借家法4条)。

借家では賃貸人が解約するためには、期間満了の1年前から6ヶ月前に通知しかつ正当事由が存在することが必要です(借地借家法26、28条)

期間を定めない場合

借地については30年の期間があることとなり賃借人からの解約申し入れの余地はありません(借地借家法3条)。更新等については期間を定めた場合と同様です。

借家については解約の申し入れの日から6ヶ月の経過と正当事由が存在することによって解約できます(借地借家法27、28条)。

このように、存続期間は長期にわたり、賃借人の地位も安定したものとなりました。

(3)賃借権の譲渡・転貸

自由に譲渡することまでは認められていません。
しかし、賃借人が土地の上の自己所有の建物を第三者に譲渡する場合に、賃貸人がそれを承諾しなかった場合には、賃借人の申立により裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法19条)。

賃借権に完全な譲渡性を認めたものではありませんが、土地上に建物が存在する場合に賃借権の譲渡を認めないとすると建物の自由な処分を阻害することになるため、一部に譲渡性を認めてバランスをとった規定といえます。
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