①住民の騒音と賃借人・賃貸人の義務
マンションのような共同住宅では多数の住民が住んでおり、騒音について問題がしばしば起こります。
人が生活する上で一切物音を立てずに生活することは不可能です。特にマンションのように壁や床一枚で他人の部屋と接しているような場合、音は響きやすいといえます。そのため、ある程度の音を立てることは許容されますし、義務違反は生じません。
もっとも、判例が示す、受忍限度を超えるような騒音を起こすような場合は、賃借人は用法遵守義務違反となるものと考えられます。
また、横の部屋の住人がうるさいため静かにさせてほしいと賃借人に頼まれた場合、賃貸人にはどのような義務が発生するでしょうか。
賃貸人には賃借人に目的物を使用収益させる義務があります。住人が寝られないなどマンションの利用に支障が生じる程に達した場合、賃貸人には騒音を出す賃借人による加害行為をやめさせる義務が生じます。いくら賃借人が頼んでも賃貸人が何もしてくれない場合、この義務違反が生じる可能性があります。
②賃貸人の修繕義務の不履行と賃借人の賃料支払義務
賃貸人が修繕義務を履行せず、賃借人の使用に支障が生じている場合、賃借した物の一部滅失の場合に賃料減額請求権を認める民法611条1項を類推適用して、賃借人の利用に支障が生じた部分につき賃料減額請求権を認めるとした地裁判例があります。
また、最高裁は、建物の破損・腐蝕が居住に著しい支障を生ずるほどでない限り、賃料全額の支払いまでは拒むことはできない、としました。
③部屋を賭博の場所や暴力団の事務所として利用する行為
賭博行為は犯罪行為です。このような不適切な用途に利用すること自体が用法遵守義務違反となり、契約解除事由となります。
暴力団が、組事務所として利用するだけでは、必ずしも違法行為がんされているか不明であり、直ちに用法遵守義務違反とはなりません。
もっとも、暴力団が入室するという事実は賃貸人に多大な影響を及ぼします。暴力団が出入りしているというだけでマンション入居者が減少するかもしれませんし、仮に抗争や犯罪行為が生じた場合、被害は甚大なものとなりかねません。
そこで、契約書に暴力団排除条項を設けるなどすべきです。賃借人の身元調査もきっちりやるべきでしょう。
以上にもかかわらず、暴力団事務所として使用されてしまった場合、警察や弁護士にすぐに連絡すべきです。