借地借家法(新法)は1992年(平成4年)8月1日に施行されました。同法が施行される前は借地法・借家法(旧法)が適用されていたわけですが、旧法と新法では仕組みが微妙に異なります。そのため、旧法が適用されていた借地・借家関係に新法が適用されるとすると、不都合となる場合もあります。

そのため、新法施行前から存在する借地・借家関係には、新法は遡及して適用されません。依然として旧法が適用されることになります。
この意味では、旧法と新法は併存しているといえます。

これは実務でも重要です。
新法施行日の前後いずれの時期に借地権・借家権が設定されたかどうかで適用される法律が異なるのです。1992年(平成4年)8月1日より前なら旧借地法・借家法、後なら借地借家法が適用されます。
皆さんも紛争が生じた時は、賃借権を設定した時期に注意して下さい。


賃借人保護という点で旧法と新法には基本的に同趣旨のものといえますが、以下のような違いがあります。

①存続期間
旧法下では、借地権を「堅固建物の所有を目的とするもの」と「非堅固建物の所有を目的とするもの」に区別して、それぞれ存続期間を決定していました。堅固建物とは、石造・土造・レンガ造りなどの建物、非堅固建物とは、木造などの建物を意味します。
存続期間は以下の通りとなります。(表①添付。内田債権各論P186)

②定期借地権の創設
従来には定期借地権という制度はありませんでした。

③更新後の存続期間
新法の場合、1回目の更新で20年、2回目以降の更新では10年となっています。
これに対して、旧法では、堅固建物が30年、非堅固建物が20年となっています。

④建物の朽廃
旧法では、存続期間の定めがあるかないかによって、建物が朽廃した場合の取扱いが異なります。存続期間の定めがある場合、建物が朽廃しても借地権は消滅しません。存続期間の定めがない場合、借地権は消滅します。
また、朽廃ではなく滅失した場合には、期間の定めの有無に関係なく、第三者に対して借地権の効力を対抗できないことになります。

これに対して、新法では建物が朽廃した場合について特に規制していません。
また、建物が滅失しても一定の事項をその土地上の見やすい位置に掲示したうえで、滅失から2年以内に建物を再築し登記をすれば、その間の権利を第三者に対抗することができます(借地借家法10条2項)。

朽廃・滅失により再築する場合、旧法では、残存期間を超えて存続する建物を建てる場合には、賃貸人が遅滞なく異議を述べない限り、建物が消滅した日から堅固建物では30年、非堅固建物では20年、期間が延長され、賃貸人は原則として契約解除ができません。

新法では、再築が当初の契約期間内の場合には、賃貸人の承諾があれば20年の期間延長、なければ残存期間内でのみ借地権を主張できます(借地借家法7条1項)。
契約の更新の後に建物の滅失があった場合、賃貸人の承諾を得ずに残存期間を超える建物を築造したときは、賃貸人は借地契約を解除できることになっています(借地借家法8条1項2項)。

なお、朽廃とは、年月の経過により建物が老朽化するような場合、滅失とは、火災によって建物が消滅するような場合を意味します。

⑤更新拒絶における正当事由
後述しますように、契約更新を賃貸人が拒絶する場合、旧法も新法も正当事由(○契約の更新・終了●更新にリンク)が必要とされています。
旧法では、正当事由の解釈基準が不明確であり、争いの原因となっていました。
新法では、明確に規定されるに至りました(借地借家法6条)。

⑥借家法
旧法にはなかった、更新拒絶における正当事由の明確化、定期借家権制度が新法で導入されるに至りました(借地借家法28条、38条以下)。
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