①賃料の支払い確保
賃貸人が賃借人からの賃料の支払いを確保するための手段として以下のようなものが考えられます。
まず、敷金・保証金を受領することです。これらについては次項で説明していますので参照して下さい。
保証人を立てることも重要です。単なる保証ではなく、連帯保証とすることをおすすめします。
なお、民法619条2項が、期間の満了により担保が消滅するとしていることから、賃貸借契約を更新する際に保証人の義務を消滅するように思えます。しかし、最判平成9年11月13日は、民法の規定にもかかわらず、原則更新するものとされる借地借家法上の賃貸借について、特段の事情のない限り、保証人の義務は消滅しない、と判断しています。
そして、賃借人・保証人の資力・勤務先の調査も重要です。契約締結後、賃借人がきちんと賃料を支払ってくれるか判断することができるからです。
②賃借人の所在不明
賃借人が賃料不払いのまま行方不明になった場合、どう対処すべきでしょうか。
まず、不足分の賃料を敷金で充当します。
それでも足りない分は、不動産賃貸の先取特権(民法311条1項1号)に基づき動産競売を申し立てます。すなわち、賃借人が部屋に備え付けた動産に先取特権を行使して競売にて換価し、金銭を受領するのです。
賃借人がこっそりやってきて部屋の動産を持って行ってしまう可能性がある場合、あらかじめ仮差押えをしておくべきです。
賃料の支払いは受けることができたが、賃借人の所在不明のため部屋の明け渡しを受けることができない場合、公示送達による賃貸借契約の解除をすべきです。
訴状に、契約解除の意思表示を記載することで、公示送達の手続き後2週間の経過によって賃貸借契約は解除されたことになります。これによって、明渡しの強制執行も可能となります。
なお、このような手続きによらずに、賃貸人が賃借人の物を無断で処分することはできません。このような行為は不法行為として損害賠償請求の対象となり得ます(民法709条)。