賃貸人が賃借人に土地や建物を貸すことと同様、賃借人が賃貸人に賃料を支払うことは賃貸借契約の基本的な要素となります。
ここでは、賃料にまつわる具体的な問題を検討していきます。

民法上、賃借物が賃借人の過失によらずに一部滅失した場合、賃借人は滅失部分の割合に応じた減額請求権が認められています。残存部分のみでは契約の目的を達することができない場合は、賃借人は契約を解除することもできます(民法611条)。

また、借地借家法上、税金の増減・地価の変動等の事情から、賃料が不相当となった場合、当事者は賃料増減額請求権を取得します。
賃貸人・賃借人がそれぞれ、賃料が低すぎるから上げさせてくれ、あるいは高すぎるから下げてくれ、といえるわけです。

当事者間に賃料額について協議が調わないときは、民事調停に付した上で(調停前置主義)、裁判所の判断を仰ぐことになります。裁判所の判断が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足ります。
裁判所の判断が確定するまでの間、賃借人は相当の賃料を支払うことにより債務不履行を免れることができます。
裁判所の判断が確定した後に、払いすぎている分があれば賃貸人が、不足分があれば賃借人が、それぞれ超過額に年1割の割合による利息を付して支払う義務を負います(借地借家法11条、32条)。

定期借家権については、特約によって借地借家法32条の賃料増減額請求権の適用を排除することができます(借地借家法38条7項)。

民法614条が、宅地・建物について毎月末に後払いと定めています。
もっとも、これは任意規定であり、特約で先払いとされることも多いです。

①賃料の支払い確保

賃貸人が賃借人からの賃料の支払いを確保するための手段として以下のようなものが考えられます。

まず、敷金・保証金を受領することです。これらについては次項で説明していますので参照して下さい。

保証人を立てることも重要です。単なる保証ではなく、連帯保証とすることをおすすめします。
なお、民法619条2項が、期間の満了により担保が消滅するとしていることから、賃貸借契約を更新する際に保証人の義務を消滅するように思えます。しかし、最判平成9年11月13日は、民法の規定にもかかわらず、原則更新するものとされる借地借家法上の賃貸借について、特段の事情のない限り、保証人の義務は消滅しない、と判断しています。

そして、賃借人・保証人の資力・勤務先の調査も重要です。契約締結後、賃借人がきちんと賃料を支払ってくれるか判断することができるからです。

②賃借人の所在不明

賃借人が賃料不払いのまま行方不明になった場合、どう対処すべきでしょうか。

まず、不足分の賃料を敷金で充当します。

それでも足りない分は、不動産賃貸の先取特権(民法311条1項1号)に基づき動産競売を申し立てます。すなわち、賃借人が部屋に備え付けた動産に先取特権を行使して競売にて換価し、金銭を受領するのです。
賃借人がこっそりやってきて部屋の動産を持って行ってしまう可能性がある場合、あらかじめ仮差押えをしておくべきです。

賃料の支払いは受けることができたが、賃借人の所在不明のため部屋の明け渡しを受けることができない場合、公示送達による賃貸借契約の解除をすべきです。
訴状に、契約解除の意思表示を記載することで、公示送達の手続き後2週間の経過によって賃貸借契約は解除されたことになります。これによって、明渡しの強制執行も可能となります。

なお、このような手続きによらずに、賃貸人が賃借人の物を無断で処分することはできません。このような行為は不法行為として損害賠償請求の対象となり得ます(民法709条)。
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